目的|実験終了後の引受けを決める
持ち帰る成果物は、提供内容、受益者、支払者、運営者、費用、採用条件、引継ぎをまとめた運営計画。ここでいう事業は、売上が立つサービスだけを意味しない。公共サービスへの採用、教育課程への定着、地域団体による無理のない継続も出口になる。
『好評だったので続ける』から、誰が何をいつまで引き受けるかへ進む。実験費が確保できたことと、採用後の運営費があることを分ける。現場の評価だけで採用を決めず、支払う側、受け入れる部署、実際の運営担当の条件を確認する。
進め方①|出口ごとの価値と責任を比べる
同じ利用者の変化を目指しても、誰が支払うかで提供範囲と説明責任が変わる。商品化を唯一の上位段階にしない。事業を新しく作らず、既存サービスへ方法を移す案も比べる。下表は教材上の比較枠であり、特定の資金調達や契約が利用できるという説明ではない。
| 出口の候補 | 支払・価値の関係 | 採用までに確認すること |
|---|---|---|
| 利用料や取引で支える | 利用者・購入者が対価を払う | 実際の選択、支払意思、支払えない人の扱い、提供原価 |
| 公共・組織内サービスへ採用 | 予算を持つ組織が受益者のために支出 | 政策・業務上の目的、予算責任者、採用手続、現場容量 |
| 教育・地域活動として継続 | 学校・地域団体・支援者が時間や資金を担う | 学習成果や地域価値、指導・運営の責任、負担と更新条件 |
| 既存の仕組みに方法だけ移す | 既存の運営者が改善を引き受ける | 新しい常設拠点なしで価値を残せるか |
| 現状維持・終了 | 新たな恒常費を負わず、既存支援へ戻す | 残る課題、利用者への説明、データと物の後始末 |
進め方②|四つの費用を同じ財布に混ぜない
費用は金額の相場からではなく、誰がどの期間に何を持つかから積み上げる。以下の四区分は教材独自の管理上の整理で、会計基準上の分類を確定するものではない。共通の人件費や場所代は配賦の方法を定め、実験費にも組織運営費にも全額を二重計上しない。
| 費用範囲 | 含めて確認するもの | 誰の判断に必要か |
|---|---|---|
| 施設の初期投資(CAPEX) | 設計・改修・設備・立上げに必要な支出。所有・更新・撤去の条件も別記 | 施設の所有者・初期資金の責任者 |
| 組織の継続運営費(OPEX) | 調整人件費、賃借、光熱、維持管理、事務等。複数案件への配賦 | 拠点・運営組織の予算責任者 |
| 個別プロジェクトの実験費 | 調査、募集、試作、実証、測定、結果返却、撤収 | 案件の責任者・実験費の支払者 |
| 採用後の運用費 | 受付・保守・更新・教育・問合せ・データ管理・終了対応 | 採用組織と現場の運営責任者 |
進め方③|価値、お金、仕事の流れを分けて確かめる
利用者の便利さは、そのまま運営組織の売上にならない。職員の時間が減ることも、支払が減るとは限らない。誰に売上が入るか、どの予算の支出が減るか、空いた時間を何に使えるか、誰へ追加の仕事が移るかを別々に書く。未確認の効果で将来費用を賄えるとしない。
採用候補へ『何を満たせば引き受けられますか』『予算を決める人は誰ですか』『追加の仕事はどの担当に入りますか』『更新しない場合、誰が終了を伝えますか』と聞く。需要が少ない、担い手が減る、助成が終わる場合を置き、縮小・代替・終了の条件を決める。具体的な契約・調達等の可否は、当該組織の担当者が現在の条件で確認する。
根拠:HM Treasury / Evaluation Task Force・2026 / Government Digital Service / GOV.UK Service Manual・2023
記入例|仮設窓口を常設化する前の採用計画
教育用の架空案件『ひだまり地区』では、空き店舗の常設窓口、既存窓口への案内方法の移管、巡回・同行支援を比較する。住民に利用料を求める案、公共側の予算で支える案、地域活動として範囲を絞る案は、支払能力・受益・負担が異なる。選択は未決定で、財源、契約、運営の引受けも未確認。
下記の期間は学習用の計画の区切りであり、実績や標準日程ではない。採用の条件がそろわなければ、順番を先送りし、恒久改修や長期運営を約束しない。
| 架空の計画時点 | 確認すること | 渡すもの・判断者 |
|---|---|---|
| 採用判断後30日までの計画 | 運営範囲、担当交代、必要な連絡が回るか | 最新版の台本・連絡系統・支出表を運営責任者へ |
| 90日までの計画 | 通常業務に入れて負荷と費用を維持できるか | 実測工数・利用状況・未対応を予算責任者と点検 |
| 365日までの計画 | 継続・更新・縮小・終了のどれを選ぶか | 年間の価値と負担、更新費、引継ぎ先を判断会へ |
出口|資料の納品ではなく、運営の受取りを確認する
採用組織が決まり十分な運営条件があるなら、会社設立や新施設整備を省いて既存体制へ移せる。支払者が見つからなくても、価値がないとは限らない。対象・提供範囲・財源・担い方を見直す一方、無償の善意を無期限の財源にしない。
引継ぎは、運営範囲、責任・権限、必要な予算、手順と研修、物・データの管理、未解決事項、更新日、終了時の対応。受け手が演習を行い、何を引き受けたかを確認する。BMW Startup GarageとFraunhofer AHEADの事例は『試す段階から、誰の採用判断につなぐか』に注目して読む。
WORKED EXAMPLE / 編集部による記入例
どこまで書けばよいか、例でつかむ。
以下は考え方を示す学習用の記入例です。実案件の実績・予算・合意を示すものではありません。
- 出口と代替案
- 【教育用の架空検討】常設窓口、既存窓口への案内方法の移管、巡回支援を比べる。場所を常設化しない選択も残す。
- 受益者・支払者・収入・削減・負担
- 【架空の仮説】住民は相談先を選びやすくなる可能性がある。紹介先は説明の重複が減る可能性があるが未検証。運営者の収入・実支出の削減は未確認。
- 四つの費用範囲と支払責任者
- 【架空の計画】仮設の実験費を先に見積もる。恒久改修費、組織の年間運営費、採用後の受付・更新費は別表で確認し、支払者未定の欄を残す。
- 採用する人の条件と手続
- 【架空の計画】運営候補と予算責任者に、提供範囲、必要人員、支出上限、採用の判断時期、手続を確認する。現在は合意前。
- 運営・権限・資料の引継ぎ
- 【架空の計画】運営候補が受付と紹介を演習し、未完了案件、データ保管、連絡先、停止・再開の権限を受け取る。採用後の問い合わせ窓口を定める。
- 継続・縮小・終了と見直す日
- 【架空の計画】計画上の30・90・365日を見直しの節目とし、運営負荷が続かない場合は開設範囲を縮めるか既存窓口へ移す。終了時も住民への案内と記録の扱いを決める。
YOUR WORKSHEET / 自分の案件で考える
価値が続く運営計画をつくる
金額が分からない欄は未見積りとし、確認相手と期限を置く。実証予算を採用後の財源と見なさない。
入力はこのブラウザに自動保存されます。ほかの端末への引き継ぎには「バックアップ」と「読み込み」を使ってください。共有する前に、個人情報や非公開情報が含まれていないか確認してください。
販売、公共・組織内採用、教育・地域活動、既存への移管、終了を比較する。
記入例を参考にする
【教育用の架空検討】常設窓口、既存窓口への案内方法の移管、巡回支援を比べる。場所を常設化しない選択も残す。
誰が得て誰が払うか、現金と非金銭価値、仕事の移転を分ける。
記入例を参考にする
【架空の仮説】住民は相談先を選びやすくなる可能性がある。紹介先は説明の重複が減る可能性があるが未検証。運営者の収入・実支出の削減は未確認。
初期投資、組織運営、個別実験、採用後運用を分け、期間・配賦・根拠を添える。
記入例を参考にする
【架空の計画】仮設の実験費を先に見積もる。恒久改修費、組織の年間運営費、採用後の受付・更新費は別表で確認し、支払者未定の欄を残す。
利用者の好意ではなく、予算・現場・承認の条件を持つ相手へ確認する。
記入例を参考にする
【架空の計画】運営候補と予算責任者に、提供範囲、必要人員、支出上限、採用の判断時期、手続を確認する。現在は合意前。
受け手ができる状態を確認し、担当交代、障害、中止、問合せも含める。
記入例を参考にする
【架空の計画】運営候補が受付と紹介を演習し、未完了案件、データ保管、連絡先、停止・再開の権限を受け取る。採用後の問い合わせ窓口を定める。
需要・資金・人の余力が下振れしたときの対応を、責任者と決める。
記入例を参考にする
【架空の計画】計画上の30・90・365日を見直しの節目とし、運営負荷が続かない場合は開設範囲を縮めるか既存窓口へ移す。終了時も住民への案内と記録の扱いを決める。
DECISION / 次に何をするか
進む。変える。いったん止める。
以下はMDLによる判断の手掛かりです。担当者と当事者で確認し、判断した日と理由をシートに残してください。
進める条件
価値の根拠と限界が共有され、支払・運営・承認・更新の責任が具体化し、受け手が引継ぎを確認できたら採用へ進む。拡張する場合は08で別に判断する。
戻って、変える条件
価値はあるが財源や現場容量が合わないなら、提供範囲、支払の仕組み、既存サービスへの移管、地域での小規模継続を比較し直す。
保留・停止する条件
必要な運用費・担当・責任を引き受ける相手がなく、負担を減らす案も成り立たない場合は恒常運営を始めない。終了の案内、物・情報の扱いまで完了する。
SOURCES / 原典を読む
根拠と、読み取れる範囲。
定義・資料に書かれたことと、教材としての整理・演習を区別しています。記入例と判断基準はMDLによる学習用の提案です。
HM Treasury / Evaluation Task Force · 2026
Magenta Book: Central Government guidance on evaluation ↗
何が分かるか:早期の評価設計、比較と基準データ、実施過程・影響・資源に見合う価値の区別、結果の適用範囲を確認できる。
読み取れる範囲・限界:英国中央政府の評価指針。本教材は統計設計や評価の専門助言を代替しない。四つの費用範囲、様式、数式の適用範囲は教材側の提案。
Government Digital Service / GOV.UK Service Manual · 2023
What each role does in a service team ↗
何が分かるか:段階に応じた多職種の働きと、サービス責任者の意思決定権限・継続運営の責任を確認できる。
読み取れる範囲・限界:英国政府デジタルサービス向けの役割説明。地域拠点の必須職名、人数、標準工数、育成効果を示すものではない。
European Network of Living Labs(ENoLL)/SCORE project · 2024
Living Lab Integrative Process Video Series ↗
何が分かるか:当事者と現場の文脈を踏まえ、試作・試験・実装・展開を反復的に扱う学習構成を確認できる。
読み取れる範囲・限界:閲覧したのは公開説明であり、講座動画を視聴したとは扱わない。沿岸都市等を含む元の文脈から、地域案件の効果や標準工程を断定しない。


