I / INPUT
何を持ち込んでいるか。
活動の出発点となる資源と課題を分けて整理します。「自社」は、その場・制度を運営する組織を指します。
- 自社・運営組織
市所有の非営利会社FVHのプロジェクト管理・共創支援の専門職。2025年の年次表では59人。市の部局・関連会社の代表で構成する取締役会が目標を設定する。
運営者・関係者の報告出典 1- 他社・事業会社
解決策を提供する企業に加え、実証を受け入れる医療・福祉の専門職が開発相手になる。企業の技術担当だけでなく、そのサービスを日々使う職員が要求と改善点を返す。
公開資料で確認出典 1- 行政・公共機関
CommuniCityではヘルシンキ市の高齢者施設、障害者サービス、就労支援等が課題を提示。病院関係者も現場と利用者をつなぐ。行政は見学者ではなく課題を持つ側として参加する。
公開資料で確認出典 1- スタートアップ
- アカデミア
CommuniCityの共同体にアムステルダム大学、アムステルダム応用科学大学等が参加。欧州全体の研究・共創基盤であり、全大学が各ヘルシンキ実証に直接参加したとは限らない。
公開資料で確認出典 1- 市民・利用者・現場
社会の支援やデジタルサービスが届きにくい住民を、課題の聞き取りから開発・評価へ招く。利用者の生活経験が、技術側には見えにくい制約を明らかにする。
公開資料で確認出典 1
有形資産
場所・設備・実証環境特定の一棟よりも市内の高齢者施設、病院、日常のサービス拠点が実証資産。MedicubeXでは保健・福祉センターのロビーに置き、受診前の動線の中で試す。
関係資本
信頼・ネットワーク・導入先市の組織への接続と、OASC、ENoLL、欧州都市・研究組織との連携を同時に持つ。地域の課題を国際公募へ出し、他都市の経験を地域へ戻す関係資本になる。
金融資本
活動資金・投資・費用負担知的資本・データ
技術・知財・知識・標準短期実証を運営するAgile Pilotingの知識に加え、CommuniCityは公募と実証のマニュアル、会議・報告のひな形を公開。担当者の暗黙知を次の都市が使える手順に変えている。
課題・ニーズ
誰の何を変えるのか社会的包摂という大きな目標を、診療前の測定、日常生活の技能習得、言語による情報格差など具体的な利用場面へ分解する。技術が新しいことだけでは採用理由にならない。
II / VALUE CREATION FUNCTIONS
資源を、どう価値へ変えるか。
以下は既存の8ステップへの編集上の対応づけです。各施設の公式な工程名や、全工程を自前で担うことを意味しません。
現場が困っていることを公募課題に変える
住民・支援組織・行政現場が必要とする改善を言葉にし、複数の事業者が応答できる課題へ翻訳する。FVHは地域ニーズの把握、公募、実証調整をつなぐ。発注候補部門が最初から関わるため、実験後に用途を探す負担を減らせる。
同じ課題に異なる解決策を並走させる
約6か月のプログラムに事業者選定、具体化、試行、評価を含める。単一案への賛否に閉じず、違う方法から学ぶ構成。期間を区切ることで、未解決点と次の開発判断を早く明らかにする。
製品評価を実際の仕事の流れに埋め込む
自己測定機器なら測れるかだけでなく、受診前に本人が使い、必要なら職員が手伝う運用を試す。採用側の手間と利用者の負担を同時に確かめることが、病院・診療所の購入判断に必要な条件を具体化する。
案件の成果と運営方法を分けて再利用する
一つの製品を広げる経路と、公募・住民参加・評価を他都市が再現する経路を用意する。公開マニュアルは会議や報告まで支援するが、読んだだけで運営能力が身につくとは限らず、地域の調整役が必要になる。
地区の将来像を実験群に変える
Kalasatamaでは市、企業、住民、研究者を集め、共有ビジョンとagile pilotsを接続した。事業終了後も他地区へ学びを渡す構造を持つ。
実証後にもデータを残す
Mobility Labでは実証場所と担当者を調整し、データカタログとデジタルツインを次の試験へ使える資源として残す。正式導入とデータ継承は別の出口。
III / OUTPUT
直接、何が生まれたか。
試作品、データ、契約、標準、育成した人材など、活動から直接生まれたもの。
IV / OUTCOME
その結果、何が変わったか。
実際の利用、行動、業務、事業、地域の変化。報告された変化と、施設の活動に帰属できる効果は区別します。
PROJECT IN FOCUS / 具体的な事例
CommuniCity:MedicubeX eHealth StationのHUSがん外来実証
確認できた段階:実証 調査確認日 2026-09-28
誰の課題を、どう扱ったか
患者が基本測定を自分で行う自己測定拠点を、HUSがん外来で実証。サービスの導入先を医療機関とし、患者の受診と職員業務の中で使い勝手を検証した。
生まれたもの
HUSがん外来に自己測定ステーションを設け、患者の基本測定と職員業務の中で試す実証を実施した。
確認できた変化
評価の限界:製品の商用展開と、この実証の継続導入・因果効果は別。契約期間、導入単価、運営費、患者別便益を未確認。
DESIGN BACKWARDS FROM IMPLEMENTATION
社会実装から逆算して、
何を先に整えているか。
実証の先にある導入・運用・継続から、この事例の設計を読み解きます。原典で確認できる仕組みと、MDLの設計解釈・他地域へ応用するための提案を区別して読んでください。「提案」「未実施」と記す内容は、当地で実施済みの工夫ではありません。仕組みの存在と、全案件で成果が出たことも別に扱います。
導入先の業務課題から募集する
社会実装の入口をサービス所管現場に置く。解決策の展示から始めず、利用者と職員の困りごとを選定条件へ変えることで、実証後に誰が引き取るのかを探しやすくしている。
短い実証で学習を買う
複数方式を同じテーマで短期間に試す。初期の価値は全件採用よりも、何が機能しないかを市と企業が早く知ること。購入の可否を判断する前段階として位置づけられる。
利用者に無理をさせない運用を試す
MedicubeXでは利用を任意にし、必要時は職員が補助する。独力で使える人だけの性能評価を避け、既存の医療現場に収まるサービスに近づける設計である。
機器の維持責任まで事業化する
MedicubeXの展開モデルは同社が機器を所有し、保守・ソフトウェア・更新も担う。購入側が試作品の維持を丸抱えしない設計。ただし、この商用モデル自体をFVHが設計した証拠は確認していない。
MORE DETAIL / 運営・根拠・応用
運営の全体像と、学びを深める資料。
費用負担、公表値、応用条件、写真・動画、原典を続けて確認できます。
01どう動かしているのか。
取締役会が年次目標・指標を定め、半年ごとに効果を報告する会社組織で、市内部の意思決定と国際プロジェクトを接続する。Agile pilot programmeは同じ課題に複数案を並走させ、概ね6か月で事業者選定、アイデア具体化、現場試行、評価を行う。CommuniCityでは高齢者施設、障害者サービス、病院等の関係者と住民が課題形成から参加し、3回の公開募集を実施。FVHは地域ニーズ把握、募集、現場との調整、実証伴走を担った。終了後には会議・報告用テンプレートを含むマニュアルを公開。実証から得た知見を市の施策に返す役割と、企業のサービス改善・市場展開を支える役割を併せ持つ。公募、現場調整、評価を一貫して伴走する中間組織である。
- 非利用者・支援が届きにくい人と課題を定義
- 行政現場の課題として公開募集
- 複数の技術・方法を実生活で共同検証
- 住民・職員の評価を仕様と市の判断へ返す
- 運営手順を公開し、別の都市へ展開
02誰が負担し、誰が担うか。
会社は主に外部案件資金で運営し、公式説明では約3分の2がEU財源。2025年予算は€7.1m。CommuniCity全体のEU助成は€4,999,012.50(全期間・全パートナー合計)。
制度やプログラムの財源と、各参加企業・地域に発生する費用は同じではありません。公開範囲を超える案件別予算・契約条件は未確認です。
03確認できたこと。
2025年の会社指標は予算€7.1m、職員59人、39プロジェクトと公式掲載。
読み取れる範囲:売上・利益・社会的便益ではない。本文には職員54人の旧記述も残るため年次表を採用。
原典で確かめる ↗ 出典の説明 ↓CommuniCityは欧州全体で101実証。2025年10月の報告では19都市、FVH担当27実証とする。
読み取れる範囲:案件数であり成功率ではない。FVH別概要にはヘルシンキ20実証とあり、都市境界・担当範囲の違いを未解決のまま保持。
原典で確かめる ↗ 出典の説明 ↓04日本で活かすなら。
日本で最初に移植すべきは、市の課題責任者と住民に届く地域組織を、技術事業者の公募より先に組む順序だ。自治体、社会福祉法人、交通事業者などの現場を選び、MDL等の中立的な事務局が参加支援と実証調整を担う。同じ移動課題でも、アプリ、人的案内、運行変更など異なる解決策を比較する。企業の新規売上と、住民の達成できた外出・職員工数・公費を分けて測り、終了前に本導入の予算部門と調達条件を確認する。補助金を獲得する能力だけが成長しないよう、生活改善と継続費用を別の責任者が検証する。以上は本調査の提案。
05そのまま真似できないこと。
101実証を101件の成功や正式調達と読んではいけない。公式報告は一部の採用を示すが、全件の契約継続、費用対効果、利用者別便益の分布は今回の公開確認範囲では追跡できない。会社本体の年度予算、欧州プロジェクトの総予算、ヘルシンキ市域と都市圏の担当件数を混同すると規模感を誤る。外部助成に依存する構造には、資金終了時の引継ぎと市の本予算化という残る難所がある。
06次に、何を確かめるか。
提案・未実施:自治体のサービス所管課を判断責任者、実証事務局を測定責任者にし、1地域・6か月で3方式を比較。事前に外出未達成率・職員工数・利用者負担を測定し、終了時に総公費、継続契約の有無、非利用者の改善を公開。便益と継続費用が合意範囲なら導入、利用偏りが残れば設計変更、財源終了後の引受先がなければ展開を止める。
07現場を、写真と動画で。
冒頭写真:雪の残るKalasatama地区の道路と集合住宅。奥に建設用クレーンが見える。
Forum Virium Helsinki – The City of Helsinki Innovation Company
Forum Virium Helsinki
公式サイトで見る ↗08原典を読む。
Forum Virium Helsinki: Finances and decision-making / Key indicators ↗
非営利市所有会社、EU財源比率、年次目標・半年報告、2025年7.1mユーロ・59人・39案件
Power of co-creation: new services through 101 tech experimentations with residents ↗
101実証・19都市・FVH担当27実証、平均約6か月、住民と職員参加
CommuniCity organised 101 pilots in cities around Europe ↗
FVHの担当、地域ニーズ形成、ヘルシンキ20実証という別集計
Writing on Smart City or urban innovations? Interview our specialists! ↗
2005年から活動、市の非営利イノベーション会社
Forum Virium Helsinki: Finances and decision-making / Key indicators ↗
市所有非営利会社、予算・人員・EU財源、取締役会
Power of co-creation: new services through 101 tech experimentations with residents ↗
101実証・FVH27件、MedicubeXのHUS実証、現場・住民の参加
Health check in five minutes: pilot testing of the MedicubeX eHealth station continues ↗
任意利用・職員支援、保健センターの現場評価、他の起業支援経路
Smart Kalasatama final report ↗
2013年開始、2021年6月終了、25のagile pilotsと後続地区への学習継承
Mobility Lab Helsinki: lessons learned ↗
実証場所と市担当者の調整、データカタログ、住民参加、2024年末終了とSOLMUへの継承
SOLMU – New mobility services ↗
市側は2026年12月31日までと記載、ERDF512478ユーロ、1~2実証場所と8~12pilot目標
