目的|一番大きな不確実さを安く小さく試す
持ち帰る成果物は、試作そのものと『何を確かめ、何は確かめていないか』の記録。すべての機能を作る前に、案の採否が変わる前提を選ぶ。GDSのalphaの説明も、重要な仮定を試せる範囲の試作を重視している。
このステップのデジタルは必須条件ではない。会話の順序は台本、導線は紙の図、窓口間の引渡しは役割演習で試せる。実物の距離や人の関係性が主な不確実さなら05へ進む。
進め方①|問いから道具を選ぶ
『アプリをつくる』ではなく、『案内を見て次の相談先を選べるか』などの一問にする。見栄えや高度な技術を足す前に、必要な入力と期待する行動を決める。
| 確かめたい問い | 最小の試作 | そこからは分からないこと |
|---|---|---|
| 案内の意味が伝わるか | 紙またはクリックできる画面 | 実生活で使う需要・継続効果 |
| 人や物が通れるか | 寸法を置いた図・簡易3D | 現地の感覚、実寸の使い勝手、安全の確定 |
| 受付が混む条件は何か | 到着・対応時間を仮置きした表計算 | 仮定した需要や対応時間の真偽 |
| 引渡しが途切れないか | 架空の相談を使う台本・役割演習 | 実際の相談の複雑さや機関の対応力 |
進め方②|同じ課題で比べ、助けた箇所を記録する
試す人には、操作方法を教える前に用事を伝える。『地域の支援を探して、次にどうするか選んでください』など、解決すべき課題で依頼する。迷った場所、戻った操作、読み違い、質問、支援が必要だった箇所を記録する。
案を比べるなら課題と説明の条件をそろえ、提示順による慣れにも注意する。『分かりやすいですか』への回答だけで採用しない。本人が望まない選択へ誘導していないか、紙や人の案内を選ぶ人が使えるかも確認する。
進め方③|モデルの入力と出力を区別する
シミュレーションは仮定を整理する道具。来訪数、対応時間、移動速度などをどこから得たか記し、未測定なら仮定と表示する。条件を変えて、結論が逆転する場所を探す。精密な図や小数点の多い数値でも、入力が未確認なら実証結果にはならない。
個人の実データを必要としない試作では架空データを使う。公開できる試作と、内部だけで確かめる試作を分ける。実際の予約・相談・支払と混同されない説明を置き、試作品をそのまま本番運用へ移さない。
記入例|相談案内の分岐だけを試す
教育用の架空案件『ひだまり地区』では、空き店舗の開設前に『困りごと→相談先の候補→次の行動』の紙カードをつくる。必要なら同じ内容を画面にする。相談先は教材内の架空名とし、実在する窓口への誤送信を起こさない。
比較は現状の案内に相当する教材用の見本と、新しい案内の見本。確認するのは案内の理解、選択に必要な説明、職員の補助。相談先の受入れや、生活上の困りごとが解決する効果は未検証のまま05・06へ引き継ぐ。
出口|試作の限界と変更理由を渡す
既存の道具で問いに答えられれば新規開発は省く。課題が人の関係や制度の条件にあるなら01・03へ戻る。操作ができたことを需要、好意的な感想を利用継続、モデル上の改善を実測効果と解釈しない。
引継ぎは、試作の版、使用した課題、入力条件、助けが必要だった場面、変更理由、残る問い。Project PLATEAUとDigital Catapultの事例は『何をデジタルで見えるようにし、現場で何を確かめ直すか』という問いで読む。
WORKED EXAMPLE / 編集部による記入例
どこまで書けばよいか、例でつかむ。
以下は考え方を示す学習用の記入例です。実案件の実績・予算・合意を示すものではありません。
- 試作で崩したい前提
- 【教育用の架空仮説】相談案内の分岐を整理すると、住民が次の相談先の候補を理解できる。
- 道具と、今回つくらないもの
- 【架空の計画】紙の相談カードを使う。会員登録、予約機能、実際の相談記録システムはつくらない。
- 参加者に依頼する課題
- 【架空の計画】『この相談内容なら、次にどこへ、どう連絡するか選んでください。分からないところはそのまま教えてください。』
- 比べる対象と条件
- 【架空の計画】教材用の従来案内と新しい案内を同じ架空相談で比べる。順序と職員の補助を記録する。
- 入力の根拠と、まだ分からないこと
- 【架空の状態】相談先名・事例は架空。実需要、窓口の受入れ、継続利用、長期効果は未確認。
- 担当・変更条件・次の試作
- 【架空の計画】試作担当が誤解される語句を修正し、評価担当が変更理由を確認する。次は実寸の配置と受付の役割演習へ。
YOUR WORKSHEET / 自分の案件で考える
最小の試作を決める
デジタルを使わない選択も、検証する問いに合っていれば有効。
入力はこのブラウザに自動保存されます。ほかの端末への引き継ぎには「バックアップ」と「読み込み」を使ってください。共有する前に、個人情報や非公開情報が含まれていないか確認してください。
それが違えば案を変える、という一つの仮定を選ぶ。
記入例を参考にする
【教育用の架空仮説】相談案内の分岐を整理すると、住民が次の相談先の候補を理解できる。
紙、会話、画面、計算、模型などから、問いに必要な最小範囲を選ぶ。
記入例を参考にする
【架空の計画】紙の相談カードを使う。会員登録、予約機能、実際の相談記録システムはつくらない。
操作方法を指示せず、達成したい用事を渡す。
記入例を参考にする
【架空の計画】『この相談内容なら、次にどこへ、どう連絡するか選んでください。分からないところはそのまま教えてください。』
課題、説明、提示順、必要な補助を記録する。
記入例を参考にする
【架空の計画】教材用の従来案内と新しい案内を同じ架空相談で比べる。順序と職員の補助を記録する。
仮定、実測、借用値を分け、現場で再確認する事項を書く。
記入例を参考にする
【架空の状態】相談先名・事例は架空。実需要、窓口の受入れ、継続利用、長期効果は未確認。
誰が記録を見て何を変えるか、次へ渡す版を決める。
記入例を参考にする
【架空の計画】試作担当が誤解される語句を修正し、評価担当が変更理由を確認する。次は実寸の配置と受付の役割演習へ。
DECISION / 次に何をするか
進む。変える。いったん止める。
以下はMDLによる判断の手掛かりです。担当者と当事者で確認し、判断した日と理由をシートに残してください。
進める条件
検証した範囲で案内や操作の重大な障壁を把握でき、残る現場の問いが明確なら05へ進む。
戻って、変える条件
理解できても選べない、人の説明が不可欠、前提条件が違う場合は仕組みや案内を変える。必要に応じ01・03へ戻る。
保留・停止する条件
試作で確かめる問いがない、個人データの扱いを決められない、実利用と誤認される場合はその試作方法を止める。
SOURCES / 原典を読む
根拠と、読み取れる範囲。
定義・資料に書かれたことと、教材としての整理・演習を区別しています。記入例と判断基準はMDLによる学習用の提案です。
Government Digital Service / GOV.UK Service Manual · 2019
How the alpha phase works ↗
何が分かるか:重要な仮定を確かめる範囲の試作と、その結果に基づく次段階の判断を確認できる。
読み取れる範囲・限界:英国のサービス開発段階の説明。紙・空間・接客の具体的な演習は本教材独自の提案であり、試作は実証や本番の代用ではない。
Design Council · 公開年の記載なし
Framework for Innovation ↗
何が分かるか:課題の探索と定義、複数案の開発、小規模な試験、反復、協働の考え方を確認できる。
読み取れる範囲・限界:8ステップの順序や本教材の個別手順を規定する資料ではない。施設や案件の効果・費用を示す根拠ではない。

