目的|人が育つことと、案件が回ることを両立する
持ち帰る成果物は、役割表、週間の作業・容量表、育成記録、引継ぎ計画。新しい共創拠点に万能の担当者を一人置くだけでは、調査、関係者調整、制作、評価、運営が同時には回らない。既存の人の得意な仕事と、必要だが誰も引き受けていない仕事を分ける。
GDSはサービスの段階に応じた多職種の働きと、決める権限を持つサービス責任者を扱っている。本教材の役割・工数・育成表は、これを地域の小さな共創案件にも使えるようにした独自の提案であり、標準配置人数ではない。
設計①|役割を、渡せる成果物で定義する
同じ人が複数の役割を担ってもよいが、名前を並べるだけで仕事が満たされたとしない。誰が実行し、誰がレビューし、誰が最終判断するかを成果物ごとに定める。予算や公開の判断を、権限のない学習者に任せない。
| 働き | 担当する成果物 | できるようになったかの確認 |
|---|---|---|
| 課題を調べる・翻訳する | 観察台帳、課題文、別仮説 | 事実と解釈を分け、反例を説明できる |
| 共創を進める | 参加計画、役割表、合意・対立の記録 | 誰の意見が未確認か、次に誰が動くかを言える |
| 体験・仕組みを試作する | 案内、画面、物、サービスの台本 | 問いに必要な範囲を作り、限界を示せる |
| 現場で評価する | 実験計画、測定定義、結果と限界 | 比較・欠測・別の説明から判断の範囲を定められる |
| 採用と資源を調整する | 支払・費用表、採用条件、契約等の確認一覧 | 支払う人と運営する人の引受けを確かめられる |
| 通常運営へつなぐ | 手順、例外対応、交代・終了の計画 | 担当者が変わっても、必要な行動を再現できる |
| 参加と公共的価値を守る | 参加条件、異議・返答、受益と負担の記録 | 届かない人や不利益を受ける人の視点を判断へ戻せる |
設計②|仕事の量から、人数と時間を決める
作業時間は、作業の回数×一回の時間×必要な人数で仮見積りし、実施後に更新する。調査や受付の時間だけでなく、募集、移動、連絡待ちへの対応、合意の整理、機材・場所の管理、報告、引継ぎを入れる。初回だけの仕事と毎回発生する仕事を分ける。
各人の引受け可能時間は、通常業務、休暇、必要な準備時間を差し引いて本人と確認する。必要時間を人数で割るだけでは配置は決まらない。実施時間帯、技能、同時に必要な仕事、現地にいなければできない仕事を重ねて確認する。
- 04・05では制作と運営設計、06では受付と観察、07では通常運営と引継ぎが同時に必要になりやすい。
- 受付しながら詳細な行動観察を一人で行う計画は、記録を簡略化するか役割を分ける。
- 無償協力も時間として数え、謝礼等の扱いと、参加を断る条件を明らかにする。
- 余力が不足したら、人を増やす前に範囲・回数・営業時間・記録量を調整する。
設計③|実案件で、見学から主担当へ進む
最初は指導者の仕事を観察し、次に成果物の一部を共同で作り、小さな範囲を主担当として任せる。準備→実行→根拠を使った振り返り→次の担当、を繰り返す。危険や不可逆な判断を、練習のために単独で任せない。
研修受講時間やイベント参加数だけで能力を認定しない。成果物、意思決定の記録、当事者・同僚からの具体的なフィードバック、担当者が変わった後の再現性を使う。プロジェクトが採用されなくても、仮説を棄却した根拠と適切な終了対応を学習成果にできる。
| 育成の段階 | 任せる仕事の例 | 次へ進む証拠 |
|---|---|---|
| 観察する | 調整会議や現場調査に同席し、仕事の理由を記す | 判断の根拠と未確認事項を説明できる |
| 共同で担う | 質問案、募集案内、記録の一部を作る | 指導者と修正理由を共有し、次に反映できる |
| 範囲を限って主担当になる | 一つの調査・試作・引継ぎを計画して進める | 必要な相談・中止・報告を自分で行える |
| 他者へ渡す | 別の担当者へ実演とレビューを行う | 相手が手順を理解し、例外時の連絡先を説明できる |
記入例|ひだまり地区の担当経験を蓄積する
教育用の架空案件では、若手担当者が最初に調査担当へ同行し、次に質問案と観察台帳を共同作成する。03では合意事項の記録、05では受付の役割演習、06では指導者の確認を受けて匿名集計を担当する。課題を調べる力と、運営を回す力のどちらを伸ばすかを本人と選ぶ。
育成台帳には、任された範囲、作った成果物、助言を受けた点、自分で止めた・相談した判断、次の担当を記す。実施前のため能力向上の実績はまだない。指導時間とレビュー時間も案件の工数・費用として見積もる。
出口|担当交代を練習して、属人化を確かめる
必要な能力と権限がそろった既存チームなら、新設の肩書きや全員共通の研修を省ける。逆に、担当が外れると止まる仕事があれば、案件を増やす前に手順、代替担当、連絡経路を整える。学習者ができたことを、監督なしで全業務ができる証拠にしない。
実際の引継ぎでは、受け手が日常作業と例外の一場面を説明・実演し、引き受けた範囲を確認する。Aalto Design FactoryとMIT D-Labの事例は『実践の何を学び、誰が支え、次へ何を渡すか』という問いで読む。役割の選び方は03、運営の引受けは07へつなぐ。
WORKED EXAMPLE / 編集部による記入例
どこまで書けばよいか、例でつかむ。
以下は考え方を示す学習用の記入例です。実案件の実績・予算・合意を示すものではありません。
- 必要な働きと成果物
- 【教育用の架空例】課題台帳、役割表、受付台本、評価記録、採用条件、運営手順が必要。現時点で採用条件の担当が未定。
- 実行・レビュー・判断の担当
- 【架空の計画】若手が匿名集計、評価担当が定義と欠測を確認、企画責任者が継続を判断。若手へ採用や公開の決裁は委ねない。
- 作業量と利用可能な時間
- 【架空の見積計画】募集から結果返却までを作業別に見積もる。受付と詳細観察は別配置を検討し、実験後に実績時間で更新する。
- 今回任せる仕事と指導
- 【架空の計画】若手は質問案の共同作成を担当し、調査担当が事前レビューと実施後の振り返りを行う。
- 能力の確認方法
- 【架空の計画】事実と解釈を分けた台帳、質問の修正理由、分からない時の相談行動を確認する。向上したという結果はまだない。
- 交代・縮小・次の役割
- 【架空の計画】受付担当が欠ける日は提供範囲を縮小する。運営候補への引継ぎ後、若手は次の小さな調査の主担当を検討する。
YOUR WORKSHEET / 自分の案件で考える
役割・工数・育成を一枚にする
「誰を育てるか」と「案件の責任を誰が持つか」を分け、両方を同じ作業表に置く。
入力はこのブラウザに自動保存されます。ほかの端末への引き継ぎには「バックアップ」と「読み込み」を使ってください。共有する前に、個人情報や非公開情報が含まれていないか確認してください。
肩書きではなく、次の担当者が使う成果物から仕事を挙げる。
記入例を参考にする
【教育用の架空例】課題台帳、役割表、受付台本、評価記録、採用条件、運営手順が必要。現時点で採用条件の担当が未定。
記入例を参考にする
【架空の計画】若手が匿名集計、評価担当が定義と欠測を確認、企画責任者が継続を判断。若手へ採用や公開の決裁は委ねない。
回数×時間×人数に、準備・連絡・振り返りを含め、同時作業を確かめる。
記入例を参考にする
【架空の見積計画】募集から結果返却までを作業別に見積もる。受付と詳細観察は別配置を検討し、実験後に実績時間で更新する。
見学、共同担当、主担当、他者への引継ぎのどの段階かを書き、指導者の時間も置く。
記入例を参考にする
【架空の計画】若手は質問案の共同作成を担当し、調査担当が事前レビューと実施後の振り返りを行う。
受講時間ではなく、成果物、根拠の説明、例外時の判断、再現性を使う。
記入例を参考にする
【架空の計画】事実と解釈を分けた台帳、質問の修正理由、分からない時の相談行動を確認する。向上したという結果はまだない。
欠員時の代替、引継ぎ演習、次に任せる範囲、見直し日を記す。
記入例を参考にする
【架空の計画】受付担当が欠ける日は提供範囲を縮小する。運営候補への引継ぎ後、若手は次の小さな調査の主担当を検討する。
DECISION / 次に何をするか
進む。変える。いったん止める。
以下はMDLによる判断の手掛かりです。担当者と当事者で確認し、判断した日と理由をシートに残してください。
進める条件
必要な働きに担当・権限・時間があり、学習者を支える指導とレビューが確保できれば担当範囲を少しずつ広げる。
戻って、変える条件
過負荷、技能の不足、同時作業の衝突が見えたら範囲・配置・指導を変える。肩書きを増やして解決したことにしない。
保留・停止する条件
責任者・代替担当・安全な監督がなく、本人の負担を許容範囲にできない仕事は任せない。提供を休止・縮小し、体制を整える。
SOURCES / 原典を読む
根拠と、読み取れる範囲。
定義・資料に書かれたことと、教材としての整理・演習を区別しています。記入例と判断基準はMDLによる学習用の提案です。
Government Digital Service / GOV.UK Service Manual · 2023
What each role does in a service team ↗
何が分かるか:段階に応じた多職種の働きと、サービス責任者の意思決定権限・継続運営の責任を確認できる。
読み取れる範囲・限界:英国政府デジタルサービス向けの役割説明。地域拠点の必須職名、人数、標準工数、育成効果を示すものではない。
OECD · 2022
OECD Guidelines for Citizen Participation Processes — Chapter 2 ↗
何が分かるか:参加が意思決定へ及ぼせる範囲、参加する人の選び方、意見の扱いと結果返却、参加過程の評価を確認できる。
読み取れる範囲・限界:公的機関の市民参加を主な対象とする。参加者がいることだけで代表性や公平性を証明するものではない。


